■気象病とその症状
■気象病とは
■低気圧や前線が近づいて気圧が低下してくると、頭痛やめまい、倦怠感などの体の不調におそわれる場合があります。それを一般に【気象病】と言います。
■気象病が発生するメカニズムはまだはっきりとは分かっていません。
通常、われわれの体はまわりの気圧の変化に対して自律神経の調節機能によって対応しながら機能を維持しています。
しかし低気圧の接近によって急にまわりから押えている圧が低下することで、その調節機能(=自律神経)が乱れるというのが一般的な理解のようです。
急な気温の変化、湿度の変化も気象病の原因とされており、外部環境の急激な変化による自律神経の不調と広くとらえることも出来ます。
■気象病のさまざまな症状
■気象病は一時的な体の不調にとどまる場合もありますが、人によっては日常生活に影響が出てしまうほどの症状が出る場合もあり、簡単にやり過ごせるものでもありません。
■頭痛
■気象病による頭痛については、脳内の神経の過剰な興奮と血管の急な拡張が関わっているといわれています。
これは片頭痛といわれる「ズキン、ズキン」という痛みです。
一般に片頭痛が起こるのは20代から40代の女性が多く、女性ホルモンとの関係も深いと考えられています。
■むくみと痛み
■気圧の低下によって、血管内の水分が組織のなかに染み出してむくみを生じることがあります。
それが原因となって頭痛や関節痛が引き起こされることもあります。
■気管支喘息の悪化
■気圧の急激な低下によって喘息が悪化する場合があります。
これは気圧の低下によって気管内の圧力も低下して狭くなり喘息が起きやすくなるためと言われています。
■首や肩のこり、めまい
■急激な気温の低下によって交感神経がはたらき、全身の血流が低下して首や肩のこりが起きやすくなります。
また、内耳の血流低下によってめまいを生じることもあります。
■めまい、動悸
■急な気圧の低下によって自律神経が乱れ、めまいや動悸といった自律神経失調症状を引き起こすことがあります。
■気分の落ち込み、集中力低下
■自律神経の乱れは身体症状だけではなく、気分の落ち込み、集中力や注意力の低下といった精神症状につながることがあります。
■気象病の検査と治療
■検査・診断
■気象病は、頭痛やめまいなどの一時的な症状が出るものの、「病気」と呼ぶような身体的変化はみられません。
したがって気象病が疑われる場合、血液検査や画像検査などの一般的な検査は行われないことも多々あるようです。
但し、日常生活に影響が出るほど症状が強い場合や、脳梗塞、心筋梗塞が疑われる場合などは脳のCT検査、血液検査や心電図検査などが必要の応じて行われます。
■治療
■気象病に対する治療は、頭痛に対しては鎮痛薬、めまいに対しては抗めまい薬などの対症療法が中心とされています。漢方薬が処方されることもあるようです。
■気象病の予防法
■日常生活での予防法
■気象病は発症メカニズムが良く分かっていないだけに、根本的な治療も難しい状況です。
自律神経がゆったりとしっかりと働いてくれる状態を整えてあげて、症状が出ないように、出ても軽く収まるようになることを目指しましょう。
①しっかりと睡眠をとる
■睡眠は体の疲れを取るだけでなく、一日中はたらいて疲弊した自律神経系を修復してくれます。
逆に、睡眠不足が日常化していると自律神経が回復しないまま翌日を迎え、働きが強過ぎたり弱すぎたりしてバランスが崩れやすくなってしまします。
・いつもより30分早く布団に入る
・早く目が覚めてもそのまま二度寝
・寝る前にリラックスする時間をつくる(下記②参照)
など、睡眠をしっかり確保する工夫をいろいろ試してみてください。
快適な睡眠についての過去の記事も載せておきますので、ご参考にしてください。
②ストレスをため過ぎない
■日常生活を送る中でストレスから逃れるのは、なかなか難しいものがあります。
ここで大切なのは、【ストレスがかかった状態を継続させない】ということです。
交感神経が亢進してストレスに対処している状態が続くと、どこかで破綻してバランスを崩し、頭痛やめまいや強い倦怠感などの症状に陥ってしまいます。
■交感神経の緊張が長く続いている状態から、急に休んで気をゆるめるとそこで症状が一気に強く出る、という場合もあります。
そうなってしまう前にリラックスモードを積極的に作り、小まめにガス抜きしてあげることが大切なのです。
・帰宅後にぬるめのお風呂にゆったり浸かる
・ゆるく心地のいいストレッチをやる
・緊張を緩める呼吸法を取り入れる
■【呼吸法】については以下の記事にまとめてありますので是非試してみてください。
自分に合ったリラックス方法を見つけて、出来るだけ毎日小まめにガス抜きをするように心がけましょう。
③朝、体を動かす
■日中は交感神経がしっかり立ち上がって適度に働いていることも大切です。
人の体は、朝目覚めるとコルチゾールというホルモンが分泌されて交感神経が立ち上がり、血圧や血糖値が上昇し活動モードに入ります。
そこから家事やラジオ体操などの軽い運動、駅までの早歩き、出来るだけ階段を使う等で体を動かすことにより全身の血流が良くなり(東洋医学的には「気血がめぐる」といいます)、一日しっかりと活動できるようになります。
日中に適度にはたらいた交感神経は夜には落ち着いてきて、副交感神経が働きはじめ、ゆったりと休めるようになります。
■自律神経を整えるためには、メリハリの利いた一日のリズムが大切なのです。
頭痛やめまい、吐き気などの症状があるときは安静にして休むべきですが、何となくだるくて気持ちが上がらない状態でも何とか体が動かせそうなら、思い切って体を動かしてみましょう。
意外にすっきりするものです。
是非、工夫しながら試してみてください。
<医療情報・出典>
■東洋医学からみた気象病
■六淫(外邪)とは
■東洋医学で気候の変化が病気の原因となるという概念として六淫(外邪)というものがあります。
・風邪(ふうじゃ)(風にさらされる)
・寒邪(冷えにさらされる)
・暑邪(夏の酷暑にさらされる)
・湿邪(湿気にさらされる)
・燥邪(乾燥にさらされる)
・火邪(高温にさらされる)
気温(寒邪や暑邪、火邪)や湿度(湿邪や燥邪)の強い環境にさらされることで身体が影響を受けて病気の状態に陥る、その仕組みを当時の知識の中で説明したものです。
■気象病の東洋医学的解釈
■東洋医学の教科書や古典には気象病についてのはっきりとした記載は見受けられません。
古典でいう「風邪(ふうじゃ)」は風にさらされることで体に侵襲してくるとされています。
しかし、そもそも「風」は気圧の変化によって生じるものであり、もしかすると「風邪(ふうじゃ)」の背景には今でいう気象病も含まれているのかもしれません。
風邪(ふうじゃ)は頭痛や顔面部のむくみを生じるとされ、めまいにもつながります。
これらは気象病の主たる症状です。
■また風邪(ふうじゃ)は【百病の長】とされ、体の防衛機構(衛気)を弱めて他の外邪を体内に引き込むとされています。
湿度が強ければ「湿邪」を引き込み、頭や全身、四肢のだるさや下痢、関節の痛みを生じます。
気温が高ければ「暑邪」を引き込み、大汗をかいて気力や体力を消耗します。
乾燥が強ければ「燥邪」を引き込み、喉や気管に影響が及んで喘息症状が悪化します。
風邪(ふうじゃ)そのものの影響が強い場合は、防衛機能(衛気)が弱って免疫も低下して風邪(かぜ)をひきやすくなります。
■気象病=風邪(ふうじゃ)というのは、あくまでも個人的な想像の域を出ません。
しかし、気圧の変化が強い時(低気圧や台風、前線が接近しているとき)には、暑さや寒さ、湿気や乾燥、さらにはストレスの影響も受けやすくなるというのは、実感としてうなづけるのではないかと思います。
いずれにしても、強い低気圧が近づいてきたら、無理をせず、適度に体を動かし、休むときはゆっくり休んで、働きづめの自律神経を癒してあげることが大切だということだと思います。
■気象病の鍼灸治療
■乱れた自律神経を整えることが主眼となります。
実際に問診や脈、体の状態を診て治療する経脈や臓腑を決め、流れが悪ければ通りを良くして、元気が無ければお灸をメインにして力を付けていきます。
特に、外部との境目の「皮」を司る【手の太陰肺経】や、体内外の圧力に影響を受ける水分を捌くはたらきを持つ【足の太陰脾経】に注意を向けることになるかと思います。
■さらに加えて頭痛やめまい、だるさ等の症状に応じて鍼や灸を施します。
ただし本質はあくまでも「外部環境の変化」に対する自律神経の疲弊または乱れなので、そちらを整えて元気を付ける治療が大事になってきます。
■自律神経が安定していくには、それなりに時間をかけてじっくりと治療していく必要があります。
状態に応じて、無理なく継続できる通い方も大事になってきます。
治療だけでなく、日常生活の改善や工夫も重要です。自宅での毎日のお灸も出来れば取り入れたいところです。
そのあたりもご相談しながら、それぞれの方に合わせて治療を進めていきたいと思います。
以上、日常生活のご参考になれば幸いです🐤
相模大野ひよこ堂鍼灸院 院長
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