首や肩、背中の凝りに悩まされている方は大勢いらっしゃると思います。
この記事では、体の軸を感じながら首から体幹へのつながりを作っていくことで首から肩、背中にかけてのコリを解消できる体操をご紹介します。
●首肩こりが起きる仕組み
■頭の重さはだいたい体重の10%、60kgの人なら6kg。ボウリングのボールと同じくらいの重さです。
デスクワークで何時間も同じ姿勢でPCに向かっている状態は、首だけでボウリングの玉を持ち上げ続けているのと変わりないということになります。

■そのときにかかる首から肩、背中にかけての筋肉の負担を考えれば、首や肩に強いこりや痛みを生じるのは当たり前のことなのです。
しかしながら人の集中力というのは大したもので、作業している最中はこうした筋肉の悲鳴になかなか気づくことが出来ません。
そして後から「あー、肩がこる。というか痛い」などとつぶやきながら肩や首をまわし始めるわけです。
■スマホを長時間見続けているのも同じことです。
しかもスマホの場合、スマホを支える手にも負担がかかり、手から肩、首までの一連の筋肉のつながりから更に緊張を強めます。
■人体の構造としては、頭は筋肉で支えるものではなく、首から体幹、地面につながる骨を主体とした軸で支えるものです。
アフリカで水が入った重たい甕を頭に載せて長い距離を歩いている子供の姿を何かの映像で見たことがあるかもしれません。
あれが人間本来の頭を支える姿勢です。
こういった頭ー首ー体幹ー腰ー足元(地面)にしっかりと軸が出来ていないと、首だけでは頭の重さを支えきれずにまわりの筋肉に負担が掛かってしまうのです。
■首肩こりの関連症状と対処法
■首から肩にかけての筋肉は頭の表面の筋肉にもつながっているので、首肩こりは筋緊張性頭痛につながります。
さらに頭の中の脳の血流も低下させて、眼の疲れや頭がすっきりしないなどの症状も強くなってきます。
首肩こり=緊張が継続すると自律神経もバランスを崩し、メンタルにも影響を及ぼします。
また、首肩こりと自律神経のバランス、メンタルの状態はお互いに深く関わっているので、負のサイクルに陥ってなかなか抜け出せなくなることもあります。
■かといって、デスクワークをしている時に頭の上の水甕を意識しながら・・・というわけにもいきません。
そこでせめてもの対策として緊張し続けている筋肉を定期的にリセットして血流を回復させてあげることが大切になってくるのです。
具体的な対処法としては、小まめに立ち上がって体を動かすことが良いのですが、今回は頭を支える軸に着目して座ったままコリをリセット出来る体操をご紹介します。
■【注意】肩こりの原因として深刻な病気が隠れている場合があります。強い頭痛やめまい、麻痺やしびれを感じる場合は下の記事を参考に病院を受診されることをお勧めします。
<医療情報>
肩こり:医師が考える原因と対処法|症状辞典 | メディカルノート
■首肩こり・リセット体操とは
■デスクワークやスマホの見過ぎで凝った首や肩をリセットして、それを維持するために大切なのは、重たい頭を支える首の骨、背骨へのつながりを回復することです。
軸の連なりが途切れて、へなっと弱いところがあると頑張ってそこを支えようと筋肉が緊張し続け、こりや痛みにつながってきます。
■逆に骨の連なり全体で支えている状態では、首や肩の表層や中層の大きな筋肉が安心して緊張状態を解くことが出来るというわけです。
その軸のつながりを作りながら首や肩、背中をほぐしていくのが、ここでご紹介する首肩こりリセット体操です。
■首肩こり・リセット体操 【天仰ぎ・へそ覗き】のやり方
■【土台と軸を作る】 姿勢の準備
・かかとにかかる脚の重さを意識しながら足をしっかり地面につける
・おへその下のお腹の中【丹田】を力まずふっくらと、けれどもしっかりと感じながら骨盤の中に収めるように載せる
・喉元【天突】(左右の鎖骨の間の窪み)を天に向けつつ、そこから胸の中と胃の中を通って、下腹の【丹田】にまっすぐ通す軸を意識する(体幹の軸を作る)
・立位の場合は、【丹田】から踵にかかる重さを意識する
<ポイント>
・足首は地面と直角になるように立てましょう
・坐骨結節(お尻の穴の両脇にある骨のでっぱり)とその前面に体の重さが載るようにすると腿裏や内股の筋肉とのつながりが意識できて骨盤も安定します
・お腹や腰の筋肉が緊張しないように、重さのかかり方と軸の通し方だけに意識を向けましょう
・下腹【丹田】→喉元【天突】→頭の中心(眼の奥)→頭のてっぺん【百会】→空の遥か彼方
と体幹の軸をつなげるイメージを体で感じながら、目頭【晴明】で正面の視線の先を抑える感じにすると真っ直ぐな姿勢を力まずに作りやすくなります
■【天仰ぎ】首と背骨を伸ばす

・天に向けた喉元【天突】から喉ぼとけの上方(顎の下)【廉泉】にかけて首の前面を真っ直ぐ上に伸ばす
・体幹の軸を保ちながら、顎先の前面【承漿】を使って大きく遠回りしながらゆっくりと無理せずに上がるところまで顔を上げて天を仰ぐ
・さらに天井に視線を送り、眼頭【晴明】で天井の向こうの空の彼方に繋がる感じでイメージする
・呼吸5回分、首の前面の伸びを感じながらそのままの姿勢を維持する
・喉が伸びて胸がじわーっと開いていく感じを味わう
・めまいや強い腰痛等を感じる方は、中止してください
<ポイント>
・体の軸から喉の奥を通って頭の中心までつながってる感じを保つこと。(首の途中でへなっと曲げないこと)
・腕は腿に楽に載せ、肘から先の重さに引っ張られる感じに意識を向けると肩の力が抜ける、そうして首だけが伸びていく感じをつかむ
・無理をせず首の前面の伸びが気持ちよく感じられる範囲で行いましょう
・視線をしっかり天に向けると首が伸びて顔を天井に向けやすくなるのを感じると思います
■【へそ覗き】(首と背骨を緩める)

・地面につけた足からお腹の中【丹田】までの土台はしっかりと真っ直ぐを保つ
・首や背中をゆるめ、頭の重さを感じながら、その重さを使って徐々に頭を垂らしていく
・そのまま頭の重さをだらりと感じながら自分の臍を覗き込む
・呼吸5回分、首の後面と背骨の伸びを感じながらそのままの姿勢を維持する
<ポイント>
・【丹田】の力が逃げて骨盤が後ろに倒れないように
・体幹の軸から喉、頭までの途中のどこかで力が抜けてしまわないように、つながりをしっかり意識する
・体は力で曲げるのではなく、頭の重さだけで曲がっていく感じ
・肘から先の重さに引っ張られる感じで肩の力を抜く
・背骨の両脇が割れて背骨と左右の肩や肋骨が魚の三枚おろしのように身が分かれていく感覚が掴めると、背骨を両脇で繋げる最深部の筋肉が働き始め、表層や中層の大きな筋肉が緩んでいくのを感じられるかと思います
■この【天仰ぎ】と【へそ覗き】を2~3回繰り返すと頭の後ろから首の付け根、背中がほぐれてきます。
今回は首と背骨の前後の動きなので、肩の凝りが残る場合があるかもしれません。
その場合は【へそ覗き】の応用として、顔を斜めに向けて(体幹は前向きで維持)頭から首、背骨へのつながりを意識しながら頭を斜め前方に垂らして(倒して)いくと、首から肩にかけて凝りが残った筋肉のストレッチも出来ます。
こわばっているところ探りながら試してみてください。
■注意
■決して力任せの無理はしないでください。
急な動き、無理な動きは筋肉にダメージを与えるだけではありません。
首の骨の間からは重要な神経が多く出ていますので、骨や神経に深刻な影響を及ぼす場合があります。
■力任せは筋肉の緊張につながり、むしろ逆効果です。
頭や体の重さや軸のつながりを感じながらやれば、自然と力が抜けて動かせる範囲もじわりと広がっていきます。
その感覚を愉しみながら、楽に行ってください。
■今回は首から背中にかけてのコリのリセット体操をご紹介しました。
また改めて、肩こりと肩甲骨まわりのお話をする予定です。
それでは、また♪
相模大野ひよこ堂鍼灸院 院長🐤
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